「破産寸前の美容室」が再生できた理由──多重債務からの逆転M&A劇

ー ディールの概要を教えてください。

売り手様は法人で美容室を経営されていました。当時は1店舗のみの営業となっていましたが、過去の負債が非常に大きく、経営が立ち行かない状況に陥っていました。消費税や社会保険料も滞納もしていました。集客のためにネット広告などを活用しようと設備投資も行ったのですが、高額な機材の導入が必要となり、かえって負担が増し、最終的には破産という選択を取らざるを得なくなりました。こうした中で、買い手様にサロンを譲渡し、代表はもちろん従業員や既存顧客も含めて引き継いでもらうことになりました。本件では、管財人の方から売却金額の妥当性について説明を求められたのですが、裁判所に提出するためのレポートの作成も当社でサポートいたしました。売却金額、価格について3通りの評価方法で評価してレポートをあげ、破産管財人の方からも認めていただくことができました。このような小規模案件で、価格算定のレポート作成に対応できる先は限られています。当社ではそうした対応も可能であり、専門的なサポートを提供できる点が強みとなっています。

「退去・差し押さえ寸前」──不安に押し潰される経営者を支えたサポートとは

ー 売り手のオーナー様は、どのような不安や課題を抱えていらっしゃいましたか。

売り手のオーナー様は、賃料を6か月分ほど滞納しており、いつ立ち退きを求められるかわからない状況でした。さらに、消費税も滞納していたため、いつ差し押さえが来てもおかしくないというような状況でもありました。しかし、オーナー様ご自身では有効な打開策を見つけられず、深く悩まれていました。

ー そのような不安や課題に対して、どのようなサポートをされましたか。

まずは買い手様を探すことから始めました。その際に重視したのは、売り手様が買い手様のもとで引き続き働け、これまで通りお客様に施術できる環境を確保することです。また、ご家族にも直接お会いして丁寧にご説明をし、ご安心いただけるように努めました。というのも、ご家族の方は本人以上に、心配されていると思います。そうした不安を取り除かなければ、ディールの成約にはつながらないと考えています。売り手様にご本人に安心していただくのはもちろん、スタッフの皆さんにも「これまで通り働ける」ということを早急にお伝えしてご安心いただき、さらにご家族の方にもご安心いただけるような対応を心がけました。

ー 今回の案件で最も印象に残っているポイントを教えてください。

売却金額に対して、破産管財人の方から「金額が安すぎるのではないか」と指摘を受け、裁判所から金額の上乗せを求められることもありました。しかし、その点についてはしっかりと評価をしたうえで妥当性を説明した結果、最終的には納得していただくことができました。売り手様が無事破産手続きができ、免責を受けることができたことは、非常に印象に残っています。

スタッフ離脱で“成約失敗”？──美容室M&Aで最重要の「人材維持」戦略

ー 今回の案件が成功した要因はどこにあると思われますか。

美容室は労働集約型の業種で、スタッフがいなければ売上も利益も立たないです。美容室のM&Aや事業譲渡がうまくいかないケースの多くは、スタッフが離れてしまうことが原因です。逆に、スタッフが残ってくれれば、成立する可能性は高まります。今回は、スタッフの皆さんにも直接お会いしたうえで状況を説明し、「これまで通り働けるので安心してください」と早い段階でお伝えできたことが、成立の大きな要因だったと思います。

「奥様も笑顔に」──破綻寸前から家庭も再生したM&Aの副産物

ー 売り手オーナー様が最も満足されたポイントを教えてください。

売り手のオーナー様は50代ということもあり、今後新たな就職先を見つけるのは難しい状況でした。そうした中でも、これまで通りお客様への施術を続けられ、安定した収入を得られたことに大変ご満足いただけたようです。また、ご本人だけでなく、ご家族、特に奥様にも喜んでいただけたことが印象的でした。というのも、長年経営が思うようにいかず収入も不安定で、家庭内の雰囲気は悪化していたそうです。そうした中で、私からご家族にも丁寧にご説明を差し上げた点を、高く評価してくださいました。奥様も真剣に耳を傾けてくださり、安心していただけたので、非常に良かったです。

「子どもの運動会に行けた」──美容師人生に訪れた“自由と収入”の両立

ー M＆A後のアフターストーリーをお聞かせください。

これは美容室のオーナー様に非常によくあることなのですが、特に小規模サロンでは、スタッフの募集をかけてもなかなか応募が集まらず、苦労されている方が多いようです。結果、オーナー様が身を削って長時間働き、売上を出すしかないというのが実情です。さらに、材料費の交渉や広告媒体を使った集客方法の見直しなど、経営に関わるあらゆる業務をすべて一人でこなさなければならないという過酷な状況に置かれがちです。しかし、M＆Aで事業を売却し、そのまま売却先で働き続けることができるようになると、状況は大きく変わります。収入が大幅にアップするだけでなく、労働環境が整ったことで、家族との時間がしっかり取れるようになったという声も多く聞かれます。美容室にとって土日は書き入れ時ですが、その土日でも休みを取れるようになり、「子供の運動会に参加できた」というような話も伺っています。

ー 今後、美容室のM&Aを検討されている売り手様へメッセージをお願いします。

M&Aを検討されている経営者の方の多くが、誰にも相談できず一人で悩みを抱えていらっしゃると思います。ご家族にさえ相談できない方や、「相談したいけれど、どこにどう相談すればいいのかわからない」という声も少なくありません。 そんなときは、私たちにぜひご相談ください。美容業界に強みを持つ私たちだからこそ、ご事情に合わせて最適なサポートができますし、お気持ちも楽になるはずです。ぜひ、お気軽にご相談ください。