内科クリニックの医療法人M&Aの成功事例!
- 案件の概要について教えていただけますでしょうか。
今回のディールは、医療法人の内科クリニックの出資持分譲渡、法人譲渡の案件です。売主様は関東の医療法人様で、買主様は独立開業を検討されている関東の勤務医の方でした。当該の医療法人様は、毎年約1億数千万円の売上がある法人様で、EBITDAで約6000万円程度の収益を上げられていました。譲渡金額は1億円以内(役員退職慰労金は除く)の案件でした。
退職金問題と税務リスクを克服!M&A成功のカギとは
- オーナー様が抱えていた不安、課題、M&Aを検討された背景はどのようなものだったのでしょうか?
後継者が不在であったため、譲渡先を探す必要がありました。課題は、譲渡後に理事長が退任された際に受け取る役員退職金の問題があることでした。退職金は、通常、最終報酬月額に勤続年数と功績倍率を掛け合わせた金額が税務上の上限とされておりますが、理事長がご希望される退職金額はその上限を大幅に超えており、かなりの内部留保が存在する状況でした。そのため、退職金が課税退職金になる可能性が高いという点が課題でした。 具体的には、売主様(法人側)のリスクとして、税務否認されることによる追徴課税のリスク、また買主様側には、所得税が発生するリスクが考えられるという点でした。この2つのリスクが、今回の案件における主要な課題でした。
- オーナー様・M&Aに対してどのようなアプローチをされたのか教えていただけますか?
売主様が税務的なリスクについて十分にご理解されていなかったため、売主様と買主様がそれぞれ負う2つのリスクについて、しっかりとご説明させていただきました。その上で、早い段階から顧問税理士様も巻き込み、リスクへの対応策を調整しながら進めました。結果、最終的に契約書に、「例えば、退職金の課税が認定された場合の取り決め」を明記しました。万が一課税が発生した場合、その責任はすべて売主様側が負うという条文を契約書に盛り込みました。これにより、双方ともに納得いただいた上で、スムーズにお話を進めることができました。 また、譲渡後に税務調査が入る可能性が高いことを前提に、顧問税理士様には、その際の立ち会い、税務当局に対して事情を丁寧にご説明いただくことを了承いただきました。このように適切な対応策を講じつつ、進めました。
買主様が魅了された理由:専門性と地域性が生むシナジー
- 買主様は売主様のどのような事業に魅力を感じ、今回マッチングしたのでしょうか。
こちらのクリニックは内科を中心に、糖尿病の患者様が非常に多いクリニックでした。 買主の先生は、もともと糖尿病の専門医で、近隣の大きな病院で糖尿病専門チームのトップとして勤務されていたため、ご自身の専門性を活かせるという点が大きな魅力でした。また、たまたま買主様のご自宅から非常に近い医療法人クリニックだったこともあり、地域的なアクセス性と、買主様が実現したい医療を提供できるという2つの要素が今回のマッチングにおいて大きなポイントになりました。
株式会社サスガキャピタルパートナー 仲川様
税理士との連携と資金調達サポートで実現!M&A成功の裏側
- 印象に残っているポイントについて教えていただけますか?
税務的な課題があったため、早期に顧問税理士様にご相談し、本件の内容を開示して協力をお願いしました。多くの場合、案件が進行する後半に顧問税理士にご相談すると、否定的な意見を述べる会計士や税理士の方がいらっしゃることがよくあります。しかし、今回の場合は早めに対応していたおかげで、税理士様と連携しながらスムーズに進めることができました。この点が非常に印象的でした。 もう一つ印象に残っているのは、売主様の資金調達のお手伝いをしたことです。特に金融機関との交渉で、売主様が約1億円を無担保で借りる交渉をしていたのですが、金融機関の方々が非常に協力的で、全面的にご支援していただきました。その結果、融資もスムーズに取り付けることができた点も大きなポイントでした。
- この案件が成功した要因は、どのような点になるのでしょうか。
売主様は初めての譲渡であり、買主様も勤務医の立場でM&Aに関する知識が全くないという状況でした。両者ともにM&Aの経験がない方々でしたので、まずは全体の流れを事前にご説明しました。そして、進行中は常に進捗状況を確認し、次に何をするべきかという手順を明確に示しながら進めました。これにより、売主様と買主様が自分たちが今どの位置にいるのか、次に何が起こるのかという不安が全くない状態で進めることができました。おそらく、これが一番の成功要因だと思います。 また、M&Aではお互いに言いづらいことも出てくるのですが、私の方でその部分を察知し顕在化させ、代弁することも重要です。例えば、買主様には、法人を引き継ぐ際にスタッフや従業員の退職給付債務がどれくらいあるのかという不安がありました。それを売主様に丁寧にお伝えし、退職給付債務については現預金で残置する旨を取り決めました。一方、売主様には譲渡後に医師国保という非常に優遇された健康保険に継続加入したいというご希望がありましたが、その点もこちらでしっかりとコミュニケーションを取り、買主様にお伝えし、売主様のご希望を叶えるための手配をしました。このように、細かい点にまで配慮し、すべての不安を顕在化させ、解決することで、双方にご安心いただけたことが成功に繋がったと考えております。
アフターストーリー:引き継がれた医療法人が拡大する未来
- オーナー様とのアフターストーリーがございましたら、教えてください。
売主様と買主様、双方ともにご満足いただけたポイントとして、まず挙げられるのは、糖尿病患者様を引き継げたことです。買主様は自身の専門性を活かし、患者様の診療ができるという点に非常にご満足されておりました。また、売主様には、課題となっていた退職金をご希望通りの額で受け取ることができ、大変満足していただいております。M&A後は、売主の先生が週に1コマまたは2コマの勤務を継続されることになり、引き継がれた先生と一緒に患者様を診察しながら、経営指導も行っていらっしゃいます。おかげで、売主様と買主様の間でうまく協力し合い、診療が順調に進んでおります。さらに、買主様が新たに訪問診療や在宅診療というクリニックの新しい機能を追加され、医療法人としてさらに拡大を見せている状況です。このように、非常にハッピーエンドなお取引になりました。
- M&Aをご検討されている方々へメッセージをお願いします。
M&Aの場合、単に医療法人やクリニックの譲渡に留まらず、退職慰労金や税務に関する課題が発生することが多いです。こういった課題に関しても、早期に関与者を巻き込んで具体的な解決策を見出すことで、円滑な承継が可能となります。最も大切なのは、初めに課題を顕在化させることです。このプロセスが円滑に進むためのポイントであり、承継がスムーズに進むための鍵だと思います。ぜひ、ご自身のご希望や懸念点を初めの段階でご相談いただければと思います。
この案件全体を振り返ると、内科クリニックの医療法人M&Aにおいて、関係者間の適切な連携とリスク管理がいかに重要であったと感じています。特に、退職金や税務リスクなどの課題に対して、早期に顧問税理士を巻き込み、適切な対策を講じることで、スムーズな譲渡が実現しました。これにより、売主様と買主様の双方が納得のいく結果を得ることができました。