買い手様は東北の農業関係の会社で、売り手様は同じく東北の米の卸の会社です。
今回は規模としては買い手様が売上約70億円、売り手様が約7〜8億円と、10倍ほどの差があるディールでした。売り手の社長は3代目で、息子さんがいらっしゃったのですが「事業を継げない」と会社を離れることになりました。その後、ご縁をいただいて、「お相手探しをしてほしい」というというご要望を受け、お引き合わせいたしました。
売り手様の会社は創業100年を超える会社で、「家族に承継し、この看板を守っていかなければならない」という強い思いをお持ちでした。しかし、家族への承継が叶わなくなり、大きな不安を感じていらっしゃったのではないかと思います。
今回は、一般的なM&Aとは少し異なる進め方をしました。通常であれば、売り手様のご希望に沿った買い手をこちらでお探しして、ご紹介する流れになります。しかし、今回は買い手様の方から打診があり、売り手様が受け入れられるかどうかを判断されたうえで、お引き合わせに至りました。
ご兄弟お二人でオーナーを務められており、株もそれぞれ保有されていました。 また、それぞれの息子さんや娘さんも会社に関わっておられ、まさに一族経営の会社のお相手をさせていただいているなと感じました。その点が印象に残っています。
利害関係者が非常に多く、意見をまとめるのが難しかったです。売り手様側は、お兄様が社長、弟様が専務を務めていらっしゃいました。それぞれのご家庭の事情もあり、異なる希望をお持ちで、時には対立が生じることもありました。買い手様も含めた3者それぞれが異なる思いをお持ちで、丁寧にすり合わせながら調整を進めていく必要があり、大変でした。
売り手の社長が人格者だったことが、大きかったと思います。M&Aでは、価格や条件など多くの交渉が発生します。今回も買い手様から、さまざまな要望がありました。売り手の社長はその要望一つひとつに丁寧に向き合い、応えられるものには真摯に応え、応えられないものには正直に「応えられない」とおっしゃる方でした。その誠実な姿勢や経営者としての考え方が、成功につながった一つの要因だったと思います。
また、買い手様も「この会社を将来こうしていきたい」という明確なビジョンと強い思いをお持ちでした。その2つがあったからこそ、今回のM&Aは成功に至ったのだと思います。
M&A後も何度かオーナー様とお会いしているのですが、買収前後で話に矛盾がないことに、ご満足いただけていると感じています。。例えば、「このタイミングで人員を投入します」「この程度の予算を割きます」といった話や、親会社と子会社間で「お米を何キロ購入する」ということも事前に取り決めており、その通りに実行されたそうです。また、「計画以上の成長を遂げている」との報告も受けており、その点もオーナー様の満足につながっているのではないかと思います。
売り手様は飲食店や病院、自衛隊などへお米を卸しているため、誰よりも地域の飲食事情に詳しく、おすすめの飲食店へ何軒も連れて行っていただいたことが印象に残っています。M&A後も変わらず関係は続いており、現在もよく飲みに連れて行っていただいています。また、売り手様は創業からの歴史も長く、非常に広い交友関係をお持ちです。異業種青年会議所に入られており、そうしたネットワークを通じて複数のお客様のご紹介もいただきました。
M&Aは、多くの方にとって一生に一度の大きな決断になるものだと思います。だからこそ、「誰と一緒に並走していくか」が非常に重要で、アドバイザーの経験値も非常に大切なポイントになると感じています。また、そもそもM&Aという選択肢が本当に最適なのかどうかを、しっかりと考え抜くことも重要です。例えば、親族承継や社内承継のほうが良い場合もありますし、私はそうした選択肢を優先的に検討すべきだと考えています。十分に考えたうえで、第三者承継という道も視野に入れたいということであれば、お力添えさせていただきますので、ぜひご相談ください。
売主は3代目であり、100年以上続く米卸業を兄弟で会社経営されていました。ご子息への承継を検討していたものの、うまくいかず断念されたタイミングで接点を持ちました。すでに譲受候補企業も想定して動いておりましたので、初回の面談から話は割ととんとん拍子に進みました。約半年後に両社納得の上でM&Aに合意。成約後もプライベートでもご連絡をいただく間柄となりました。