「時間を買う」M&Aの魅力:40年以上の価値を次世代へ
― 案件の概要について教えていただけますでしょうか。
店名は現在も使用されているため、伏せさせていただきますが、売り手様は東京都内の店舗でした。駅から徒歩1分ほどの場所にある東京都内の店舗で、創業から45年という歴史を持ち、席数が20程の小規模な寿司店の案件でした。
― オーナー様がM&Aをご検討された背景やご希望されていた売却条件を教えていただけますでしょうか。
売却理由は、オーナー様がすでに80歳を超えており、ご自身の年齢的に限界を感じておられたことです。それに加えて、オーナー様には30年以上勤続されている従業員が2名おり、その方々の雇用の安定を確保したいという想い、屋号を引き継いでもらいたいという想いが強くございました。屋号の継続には、従業員の継続はもちろんのこと、顧客をそのまま引き継ぐという点で、大きなメリットがございます。また、40年以上使われてきた屋号を活用することで、新たに経営される方は45年という時間をお金で買えるメリットがあります。 この案件の買い手様は、上場企業様に勤務されていた女性で、副業としてスタートされました。この店舗には従業員の経験や顧客基盤が整っていたため、買い手様が手間をかけずに運営を開始できる案件だったため、おすすめさせていただきました。現在、ご成約から8ヶ月ほど経過しております。 収益が大きく伸びたという訳ではありませんが、過去の収益を下回ることなく、順調に推移しております。また、オーナー様も、従業員の雇用が無事に継続されたことに非常に満足されております。
3つのM&A成功の秘訣
― M&Aをご検討されている方々へアドバイスをお願いします。
M&Aに関して、売り手様・買い手様の両方に共通してお願いしたいのは、資料の提供についてです。売り手様には、収益や過去1年間の決算書、PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)などの資料をご用意していただく必要があります。その際に、必ずありのままご提出をお願いできればと思います。粉飾等行うと、後々M&Aのディールが進行した際に問題が発生する可能性が高く、両方が判断を誤る原因にもなります。そのため、資料には手を加えず、正直な内容をそのまま出して頂くことが大切です。
次に売却価格(譲渡価格)についてですが、これは売り手様・買い手様両方に共通する課題です。売り手様は高く売りたい、買い手様は安く買いたいというご希望があるのは当然です。ただ、お互いが提示した数字に固執せずに柔軟に考えていただければと思います。譲渡価格に縛られすぎますと、交渉が行き詰まるケースも少なくありません。柔軟な姿勢を持って交渉することが非常に重要だと考えております。
最後に、物件に関する注意点もございます。貸し店舗や貸事務所などの賃貸物件を利用されている場合、賃貸借物件のオーナー様が新たな借主様に対して利用の継続を懸念されるケースもございます。過去、そういったケースがあった場合、最終的に貸主様の同意を得ることができたのですが、貸主様への説明や交渉が必要となる場合もございますので注意が必要です。
創業40年の飲食店がオーナーの高齢化と後継者不在による事業譲渡を決意されました。