譲渡額
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売上高
非公表

調剤薬局業界の事例

「30代薬局オーナーの決断」— M&Aが開いた新たな未来

エリア
関東
オーナー
30代
売却検討理由
その他
スキーム
株式譲渡

西尾 太一

キングスマンキャピタルパートナーズ株式会社

本件は、東京23区内で2店舗を運営する30代のオーナー様が、関西の大手調剤薬局チェーンに事業を譲渡されたM&A事例です。一般的に調剤薬局のM&Aは活発ですが、30代での譲渡は珍しく、創業者利益の確保や人材採用の難しさが決断の大きな要因となりました。

今回の成功要因は、オーナー様の希望する譲渡条件を満たす買い手を粘り強く探し続けたこと、そして価格調整や交渉を慎重に進めた点にあります。また、譲渡後の引き継ぎ期間を短縮する条件を引き出せたことも、オーナー様の満足度につながりました。

調剤薬局業界は、規制や市場環境の変化が激しく、M&Aを検討されるオーナー様も増えています。事業承継や経営課題にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

東京の小規模薬局、関西の調剤薬局とのM&A

ー ディールの概要を教えてください。

売り手様は、東京23区内で2店舗の調剤薬局を経営されているオーナー様でした。買い手様は、関西で約500店舗の調剤薬局を展開する中堅企業です。関東圏内への進出を目指し、買収を実行されました。

30代オーナーが選んだM&Aの理由とは?創業者利益を手にする決断

ー 売り手のオーナー様は、どのような不安や課題を抱え、M&Aを決断されたのでしょうか。

売り手のオーナー様はまだ30代とお若い方で、M&Aを決断された最大の理由は「お金」でした。ご自身で調剤薬局を立ち上げて経営を続けてこられましたが、当社で財務資料をお預かりして企業評価を行ったところ、「この金額であれば、現状事業を継続するよりも創業者利益を獲得して、新たな挑戦をしたほうが良いのではないか」と判断され、M&Aの検討を始められました。

ー 若くして譲渡されるのは、調剤薬局業界では一般的なことなのですか。

30代での譲渡は、珍しいケースだと思います。ただ、調剤薬局自体が、非常にM&Aの件数が多い業種です。「いずれは売却しよう」と考えている管理薬剤師のオーナー様は、他の業種に比べて多いのではないかと思います。

人材難と個人経営の限界を乗り越えて:若手オーナーの挑戦

ー 売り手のオーナー様は、もともと別の事業をやりたいとお考えだったのですか。

別の事業への関心もあったようですが、調剤薬局を2店舗運営するなかで、人材採用に非常に苦戦されていたと伺っています。M&Aを検討された理由の一つはお金の問題ではあるのですが、個人経営のキャパシティに限界を感じられたことも理由の一つであったと思います。

ー 今回の案件を受託された経緯について教えてください。

通常であれば、当社が企業評価を行ったうえで、その結果をもとに進めるかどうかをご判断いただく流れになります。しかし今回は、取締役に奥様も入られており、ご夫婦二人三脚で経営をされていました。 
打ち合わせはご主人様と進めましたが、最終的な判断には奥様との相談が必要とのことで、一度持ち帰っていただくことになりました。その後、約1週間後に再度ご連絡をいただき、「この金額が担保されるのであれば、M&Aを進めたい」との意向を示されたため、正式に進めることになりました。

ー 売り手様は、他の仲介会社にもご相談されていたのですか。

その点については特にお聞きしていませんが、おそらく他の仲介会社にもご相談されていたと思います。ただ、M&A仲介業務は売り手様と買い手様をマッチングする業務であり、「基本的にどの仲介会社を選んでも買い手様や譲渡金額が大きく変わることはない」ということは、折に触れてお話していました。結果として、弊社が独占でお預かりし、ご検討を進めていただくことになりました。

買い手企業とのマッチング成功の秘訣:アドバイザーが語る裏話

ー 御社が調剤薬局のM&Aに強い会社であるとアピールできたことも、独占で案件をお預かりできた要因の一つだと思いますが、売り手様に選ばれた理由はどこにあるとお考えですか。

弊社はこれまでに500店舗以上の調剤薬局のM&A成約した実績を有しており、大手仲介会社の調剤薬局チームと比べても大きく遜色はないと考えております。 
また、弊社は調剤薬局に特化したメンバーで構成されており、日々密に情報共有を行っています。買い手様からは「このような企業なら検討したい」「こういう企業を買収したい」といった情報も逐一入ってきます。そのため、仮に他社と競合になっても、競争に敗れることはほとんどありません。

ー 買い手探しにおいて、ポイントとなった点はございますか。

本件は、買い手探しに非常に苦戦した案件でした。 というのも、企業評価を行った段階では業績が好調で、少し前の決算書や医療機関別のレセコンデータをお預かりしていたこともあり、当時の株価は非常に高くついていました。しかし、直近の業績はそれほど右肩上がりには伸びておらず、株価が希望金額に達しない候補先がいくつかありました。そこで、時間をかけてオーナー様と綿密に打ち合わせを行い、初回の企業評価額を下げることなく、ご希望の金額で買い手様にご提示いただくことができました。結果として、売り手様にもご納得いただいた上での成約となりました。

ー アドバイザーとしてサポートする中で、特に力を入れられたことはございますか。

売り手様は、買い手様がどの程度の金額を提示してくるのかを非常に気にされていました。しかし、希望条件に合わない提示が続くこともあり、オーナー様が意欲を失いかける場面が何度かありました。条件を一つひとつ提示する中で、オーナー様の表情が曇ることもありました。やる気を失ってしまうと、M&Aの成約までに時間もかかってしまいます。そこで、毎日メールや電話でこまめに連絡を取り、丁寧にコミュニケーションを重ねることで、モチベーションを維持していただけるよう努めました。この点が、特に頑張った部分です。

ー 今回の案件において大変だったことはございますか。

オーナー様は30代と非常にお若く、M&Aを決断された理由の一つは個人経営の限界を感じられたことでしたが、「しっかりと資金を残したい」という思いもお持ちでした。 
そのため、希望する金額に到達できるよう、私たちも手数料の調整や買い手様との交渉を重ねました。「この条件を提示させていただく代わりに、金額は担保します」というような交渉が、毎日のように続いていました。そして、最終的には、売り手様の希望に沿う形で、買い手様から条件を提示していただくことができました。こうした調整作業にも、多大な労力を費やしました。

ー 今回の案件が成功した要因はどこにあると思われますか。

一つは、私たちアドバイザーが最後まで諦めずに、買い手様を粘り強く探し続けたことです。諦めるのは簡単ですが、売り手様のご希望に合う企業様を探し出すことが、仲介の役割であり醍醐味でもあります。心折れることなく探索を続けたことが、一つのポイントだったと思います。 
また、売り手のオーナー様は資金の確保を重視されていましたが、丁寧にM&Aを進めることも望まれていました。そのお気持ちに寄り添うことはもちろん、希望される条件を細かく確認し、提示された条件が希望に沿うものではなかった場合には、どこまで妥協できるのかを伺いながら、丁寧に調整を進めました。ここの対応をしっかり行えたことも、成約まで持っていけた一つの要因だと思います。

ー 売り手オーナー様が最も満足されたポイントを教えてください。

基本的に調剤薬局は、管理薬剤師に加算関係が紐づいている形になっています。売り手オーナー様は管理薬剤師で、薬局を管理する立ち位置のポジションでした。加算がオーナー様に紐づいており、オーナー様がいなくなると、国からもらえる地域支援体制加算や在宅件数の要件に応じた加算等が、受けられなくなる可能性がありました。
調剤薬局のM&Aでは、買い手様が管理薬剤師の継続勤務を希望されるケースが多いです。しかし、今回は「譲渡後、約3か月間の引き継ぎを終えれば勇退できる」という条件を買い手様からご提示いただきました。この点に関して、売り手オーナー様は非常に喜んでいらっしゃいました。M&Aは単に売って終わりというわけではありませんが、今回のケースでは、「引き継ぎをしっかり行えば、退任できる」という条件を引き出せたことが、良かったポイントだと思います。

kingsman capital partners株式会社 西尾 太一 氏

ー M&A後のアフターストーリーをお聞かせください。

買い手様とは、現在他の案件についてお話を進めており、M&Aが1件成立して終わりではなく、次につながるアプローチを行っています。 我々としては業務の部分で非常に助かるお付き合いではあるのですが、それだけでなくプライベートでもお食事やお酒の席をご一緒するなど、日々コミュニケーションを取っています。 
売り手様とは直近では連絡を取っていませんが、いつでもご連絡いただける体制を整えています。もし今後、新たに薬局を開設されるご希望があれば、弊社から案件をご紹介することも可能です。M&Aが成立して終わりではなくて、次に繋がるような関係を構築しております。

― M&Aを検討されている調剤薬局のオーナー様へメッセージをお願いします。

現在、調剤薬局を運営されている皆さま、日々の業務本当にお疲れさまです。加算や薬価の改定に加え、業界全体がめまぐるしく変化する中、Amazonなど大手企業の市場参入も進んでおり、中小・零細の調剤薬局オーナー様は日々ご苦労されているとお聞きしております。

M&Aを検討される際、多くのオーナー様が「事業をしっかり引き継いでほしい」「資金をしっかり確保したい」「業界の先行きが不安」といったことをポイントに考えられると思います。弊社は、もともと調剤薬局のM&A支援に特化して創業した会社です。そのため、オーナー様のご希望に寄り添い、条件に沿った最適なM&Aを実現できます。どんなことでも、お気軽にご相談ください。

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