譲渡額
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売上高
非公表

ホテル業界の事例

「M&A未経験オーナーの決断 〜信頼と対話が生んだ民泊事業の未来〜」

エリア
関東
オーナー
非公表
売却検討理由
その他
スキーム
事業譲渡

菊地 成俊

株式会社TabijiPartners

 本案件は、M&Aの経験がない売り手オーナー様が、初めてのM&Aに挑まれたケースでした。当初、M&Aという選択肢自体を考えておらず、不安や不信感を抱えていました。そのため、手続きの意義や買い手側の視点を細かく説明しながら、少しずつ信頼を築いていくことを重視しました。
また、買い手様も民泊事業に初めて取り組むという背景があり、最終局面で大きな不安を抱えられていました。その際、予約サイトの操作方法を画面共有しながら説明するなど、具体的なサポートを行い、時間をかけて信頼関係を深めることで、最終的に成約に至ることができました。
 本案件の成功のポイントは、「地道なコミュニケーション」と「誠実な対応」でした。M&Aは単なるビジネスの取引ではなく、売り手様・買い手様双方が納得できる形で進めることが重要です。特に未経験のオーナー様にとっては、不安を一つひとつ解消することが成約への鍵になります。
 成約後も、売り手様は新たな環境で清掃業をスタートし、順調に成長されています。一方、買い手様はM&Aを通じて民泊事業に深く関わるようになり、業界内でのプレゼンスを高めています。
 民泊業界は今後さらなる成長が期待される分野であり、ノウハウを持つ事業者の価値はますます高まるでしょう。事業承継やM&Aを選択肢として考えられている方々には、ぜひ「信頼できる相手との対話」を大切にしながら、新たな可能性を模索していただければと思います。

M&A未経験オーナーが抱えた不安とは?一歩を踏み出すまでの背景と未来のご提案

 

ー案件の概要について教えていただけますでしょうか。


 売り手様は民泊事業を中心にされている方でした。合同会社様だったこともあり、年商が1,000万円から1,500万円ほどの小規模な会社様で、会社の事業の3分の1を占める民泊事業を譲渡したい意向をお持ちでした。買い手様は、教育業界で長年事業をされており、複数法人をお持ちの60代の方でした。
 

 ーM&Aに対する不安や課題をオーナー様は抱えていたと思いますが、オーナー様が抱えていた不安、課題はどのようなものだったのでしょうか?


 一般的な法人様であれば、これまでに何度もM&Aのご提案を受けたことがあるのは珍しくないと思います。しかし、今回の案件に関してはM&Aのお話自体が初めてだったため、その選択肢自体を考えていない状況でした。そのため、実際に何をすべきかについて、かなりの不安感や不信感を抱えていらっしゃったと思います。
 その状況を踏まえ、ディールの進行時、1つ1つの手続きについて「行う理由」「相手側からの意見」「背景」などを丁寧にお伝えし、進めていきました。そうすることで、少しずつ不信感を解消できたのではないかと感じております。


買い手との信頼構築が鍵!地道な交渉で実現した理想のマッチング

 

ーM&Aに対する不安や課題をオーナー様は抱えていたと思いますが、それに対してどのようなアプローチをされたのか、また、買い手様をどのように見つけたのについて教えていただけますか? 


 弊社は業歴が浅かったため、お互いの信頼関係の構築を非常に大事にしておりました。信頼関係を築くために、まずはこまめに連絡を取ることを重要視しました。すぐに返信することはもちろんですが、土日を問わず何かあればすぐにご連絡し、また相手からもご連絡をいただくようにして、関係性がどんどん深まっていったと感じております。
 一方で、どのように買い手様をを見つけてきたかという点ですが、これはかなり多角的にアプローチしました。民泊事業をされている方との繋がりを活用したり、ポータルサイトに掲載してみたりとさまざまな手段を試しました。その中で、偶然にもご紹介いただいた方とお会いすることになりました。お相手の方に福岡県に住んでいる娘様がおり、大分県の案件をご購入したい意向があったため、偶然にもマッチングがうまくいきました。


 ー最も印象に残っているエピソードについて教えていただけますか?


   売り手様はもちろんのこと、買い手様も民泊は初めてだったため、M&Aに対して不安を抱えておりました。買い手様は民泊の事業内容がよく分からないという状況でしたので、基本合意に入ってから最終局面で「不安だから、どうしようかと思っている」と口にされました。その時点では、ほぼ99%まで話が進んでいたものの、買い手様に不安感があったことで交渉が停滞しました。そこで、私はその不安を解消するために、予約サイトの操作方法などを一緒に画面共有しながら丁寧にご説明させていただきました。そのようなやり取りを1週間から1ヶ月にわたって続け、地道に交渉を重ねた結果、不安点が少しずつ解消され、最終的に成約に至ることができました。こうした丁寧な進め方が、非常に重要だったと思います。
 
 

ーこの案件が成功した要因は、どのような点になるのでしょうか。


 コミュニケーションの総量が大切であり、それに尽きると考えております。売り手様と買い手様の双方には常に不安や不信感があると思いますが、仲介者が少しでもコミュニケーションを増やすことで間違いなく両者にとって有益な材料となるはずです。特に私自身が業歴が浅かったということもあり、より多くのコミュニケーションを取るように心がけました。これらのことが最終的にマッチングに至った一因だと思っております。


 売却後も続く民泊の成功ストーリー!双方が見つけた新たな成長

 

ー売り手のオーナー様が最も満足されたのはどのような点だったのでしょうか。

 

   売り手様は、大分県の別府から離れなければならないということがすでに決まっておりました。そのため、期限内にディールを完了させることが重要だったため、その期限内にディールを完了できた点にご満足いただけたと思います。元々売り手様はM&Aという選択肢を考えていなかったのですが、その選択肢をご提案し、最終的に期限内に達成できた点がご満足いただけたのではないかと思います。
 

 

ーオーナー様とのアフターストーリーがございましたら、教えてください。

 

   売り手様は、現在は京都で民泊関係の清掃業をされております。事業譲渡との対価も資本としてお使いになられ、順調に清掃業が伸びているとお伺いし、非常に良かったと感じております。一方、買い手様は、民泊全般のご相談を請け負うことが増え、弊社としては料金をいただかず、現在も定期的に会食にも行かせていただき、民泊全般のご相談をいただいております。買い手様がM&A以外でも自社で民泊をされたりと民泊にどんどん深く関わられている点は、個人的にはとても嬉しいポイントです。
 
 

 観光産業の成長を見据えて!民泊事業者への未来へのご提案

 

ー最後に、今後、特に民泊の領域で問題を考えてらっしゃる相手のオーナー様に向けて、メッセージ、アドバイスをお願いいたします。


 日本の観光産業は現在非常に成長しております。その中で、民泊業界もようやく犯罪に利用される場所という認知から脱し、ひとつの職業として認められるようになったと感じております。
 民泊業界はこれまで、プレイヤーとそれ以外の人々との情報の非対称性が非常に高い業界でした。しかし、実際にディールを進める中で、現在民泊を運営している方々のノウハウは非常に希少であり、その価値は高いと実感しております。今後のことを考えた際に、個人事業主の方が抱える課題や選択肢は多いと思いますが、民泊のノウハウは日本の産業にとって非常に重要です。そして、それを資本力のある方々と共に拡大していけることは、非常に刺激的で楽しい部分でもあり、皆様とっても次のステップに進む良い機会だと思います。
  民泊業界で培われたノウハウは非常に価値のあるものです。それをさらに資本を投入し、世界に届ける体制を作っていくことにご関心を持っていただけると、とても嬉しいです。