売り手様は民泊事業を中心にされている方でした。合同会社様だったこともあり、年商が1,000万円から1,500万円ほどの小規模な会社様で、会社の事業の3分の1を占める民泊事業を譲渡したい意向をお持ちでした。買い手様は、教育業界で長年事業をされており、複数法人をお持ちの60代の方でした。
弊社は業歴が浅かったため、お互いの信頼関係の構築を非常に大事にしておりました。信頼関係を築くために、まずはこまめに連絡を取ることを重要視しました。すぐに返信することはもちろんですが、土日を問わず何かあればすぐにご連絡し、また相手からもご連絡をいただくようにして、関係性がどんどん深まっていったと感じております。
一方で、どのように買い手様をを見つけてきたかという点ですが、これはかなり多角的にアプローチしました。民泊事業をされている方との繋がりを活用したり、ポータルサイトに掲載してみたりとさまざまな手段を試しました。その中で、偶然にもご紹介いただいた方とお会いすることになりました。お相手の方に福岡県に住んでいる娘様がおり、大分県の案件をご購入したい意向があったため、偶然にもマッチングがうまくいきました。
売り手様はもちろんのこと、買い手様も民泊は初めてだったため、M&Aに対して不安を抱えておりました。買い手様は民泊の事業内容がよく分からないという状況でしたので、基本合意に入ってから最終局面で「不安だから、どうしようかと思っている」と口にされました。その時点では、ほぼ99%まで話が進んでいたものの、買い手様に不安感があったことで交渉が停滞しました。そこで、私はその不安を解消するために、予約サイトの操作方法などを一緒に画面共有しながら丁寧にご説明させていただきました。そのようなやり取りを1週間から1ヶ月にわたって続け、地道に交渉を重ねた結果、不安点が少しずつ解消され、最終的に成約に至ることができました。こうした丁寧な進め方が、非常に重要だったと思います。
コミュニケーションの総量が大切であり、それに尽きると考えております。売り手様と買い手様の双方には常に不安や不信感があると思いますが、仲介者が少しでもコミュニケーションを増やすことで間違いなく両者にとって有益な材料となるはずです。特に私自身が業歴が浅かったということもあり、より多くのコミュニケーションを取るように心がけました。これらのことが最終的にマッチングに至った一因だと思っております。
日本の観光産業は現在非常に成長しております。その中で、民泊業界もようやく犯罪に利用される場所という認知から脱し、ひとつの職業として認められるようになったと感じております。
民泊業界はこれまで、プレイヤーとそれ以外の人々との情報の非対称性が非常に高い業界でした。しかし、実際にディールを進める中で、現在民泊を運営している方々のノウハウは非常に希少であり、その価値は高いと実感しております。今後のことを考えた際に、個人事業主の方が抱える課題や選択肢は多いと思いますが、民泊のノウハウは日本の産業にとって非常に重要です。そして、それを資本力のある方々と共に拡大していけることは、非常に刺激的で楽しい部分でもあり、皆様とっても次のステップに進む良い機会だと思います。
民泊業界で培われたノウハウは非常に価値のあるものです。それをさらに資本を投入し、世界に届ける体制を作っていくことにご関心を持っていただけると、とても嬉しいです。
株式会社TabijiPartners
本案件は、M&Aの経験がない売り手オーナー様が、初めてのM&Aに挑まれたケースでした。当初、M&Aという選択肢自体を考えておらず、不安や不信感を抱えていました。そのため、手続きの意義や買い手側の視点を細かく説明しながら、少しずつ信頼を築いていくことを重視しました。
また、買い手様も民泊事業に初めて取り組むという背景があり、最終局面で大きな不安を抱えられていました。その際、予約サイトの操作方法を画面共有しながら説明するなど、具体的なサポートを行い、時間をかけて信頼関係を深めることで、最終的に成約に至ることができました。
本案件の成功のポイントは、「地道なコミュニケーション」と「誠実な対応」でした。M&Aは単なるビジネスの取引ではなく、売り手様・買い手様双方が納得できる形で進めることが重要です。特に未経験のオーナー様にとっては、不安を一つひとつ解消することが成約への鍵になります。
成約後も、売り手様は新たな環境で清掃業をスタートし、順調に成長されています。一方、買い手様はM&Aを通じて民泊事業に深く関わるようになり、業界内でのプレゼンスを高めています。
民泊業界は今後さらなる成長が期待される分野であり、ノウハウを持つ事業者の価値はますます高まるでしょう。事業承継やM&Aを選択肢として考えられている方々には、ぜひ「信頼できる相手との対話」を大切にしながら、新たな可能性を模索していただければと思います。