事業成長への挑戦:売主様がM&Aを選んだ理由
― ディールの概要を教えてください。
売り手様は、複合体として様々な事業を展開されている企業です。対象事業以外の分野で、さらに事業成長を目指したいとお考えで、本腰を入れていくために対象事業の譲渡を検討されていました。買い手様は個人の方です。これまで携わってきた事業分野を活かしながら、起業家としての第一歩を踏み出したいという思いで、M&Aの案件を探していらっしゃいました。そこで、弊社から提案をさせていただいたところ、ご自身のバイタリティを最大限に発揮できそうな領域であると感じていただき、「ぜひ検討したい」と前向きなご返答をいただきました。そして、最終的に成約に至りました。
― 売り手のオーナー様は、どのような不安や課題を抱えていらっしゃったのでしょうか。
不安要素としては、本業が人気のビジネスで、ご自身もプレイングマネージャーのようなポジションで活躍されており、なかなか人手が足りていない状況でした。対象事業自体は非常に伸び代があるものの、ご自身では対応が難しくなり、今後の事業運営に対する不安を感じていらっしゃいました。そこで、「どうしたらいいのか」とご相談をいただき、M&Aという手法があることをご提案させていただきました。その結果、「M&Aで動いてみましょう」ということで、話が進んでいきました。
個人買主の企業戦略:M&Aに踏み切った背景とは
― 今回の買い手様は個人の方とのことですが、どのような理由でM&Aを決断されたのでしょうか。
買い手様が重視されていたポイントの一つが、これまでの事業領域での経験を最大限に活かしたいということでした。また、個人でのM&Aを検討されていたため、収益の安定性も重視されており、フロービジネスよりもストックビジネスに近い事業内容をお探しでした。さらに、資金面においては金融機関との連携が前提となっていましたが、無理なく実行できそうだということで、3つの要素がうまく重なり、ご検討いただけました。
アーク・パートナーズ合同会社 梅津慎太郎様
資金調達の壁を越えて:成功に導いたポイントとは
― 今回の案件で難しかった点を教えてください。
売り手様は、買い手様が個人の方ということで資金面を心配されており、その不安をいかに払拭するかが難しいポイントでした。さらに、その不安を払拭するだけでなく、実際に資金調達まで実行できるのかという、2段階のハードルがありました。まず、売り手様の不安を解消するためには、買い手様と共に何度も売り手様の元に足を運びました。そして、事業として対応できることを示すとともに、資金面に関しては具体的な事業計画を基にどのように金融機関と交渉して調達するのか丁寧に説明をしました。このように売り手様の不安を一つ一つ払拭していったことが、難しかったポイントの一つでした。また、金融機関から100%の資金調達を行うのは、非常に困難であると感じていました。そのため、金融機関目線で返済を見据えたキャッシュフロー計画を、買い手様と共に作成することも重要なポイントでした。これはM&A仲介の範囲を超える部分ではありましたが、買い手様の事業計画作成もサポートさせていただきました。この点は、難しかった点でもあり、同時に成功の要因でもあったと認識しています。
― 他にも今回のM&Aが成功したポイントがあれば教えてください。
買い手様にとって、今回が初めてのM&Aでした。企業が買い手となるケースは多いのですが、個人が買い手となるケースはそれほど多くありません。そのなかで、弊社には個人の買い手様とのM&Aを支援した実績があります。その経験を活かし、個人の方が抱える不安に寄り添いながらご相談に乗って話を進められたことが、もう一つの成功要因だったと考えています。
双方が得たメリットと今後の展望:経営者様へのメッセージ
― 今回のM&Aで、双方が満足されたポイントを教えてください。
売り手様としては、経済的な条件はもちろん定性的な要素についても、当初希望されていた条件に近い形でディールを進められたことが満足につながったと考えています。また、買い手様にとっても、比較的良い条件でM&Aを実現することができました。ご自身で一から事業を立ち上げるのは、難しい部分もあると思います。そのなかで、金融機関からの資金調達をうまく活用しながら、ご自身で新規ビジネスのスタートを切るきっかけを掴まれたのは、良かったと思います。
― 今後M&Aを検討されている方へメッセージをお願いします。
将来何が起こるかわからないからこそ、M&Aを経営戦略の一つとして持っておくことは、経営者としての義務だと思います。そのことを念頭に置きながら、信頼できるM&A会社を選定して話を聞いてみることを、一つの選択肢として持っておくといいのではないかと思います。
この案件は、売り手が本業に集中するため、成長の伸び代がある事業を譲渡したM&Aの成功例です。買い手様が個人であったため、資金調達の不安を払拭するために事業計画を具体的に示し、金融機関と連携しました。個人の買い手様に寄り添いながら進めたことで、経済的・定性的な要素の両面で双方の満足度が高まりました。M&Aを戦略の一つとして取り入れ、適切なサポートを受けることが成功の鍵となりました。