売り手様からご相談をいただいたのは、コロナ前のことでした。フィットネス業界は比較的流行の移り変わりが激しい業界で、特に売り手様は少し特徴のあるフィットネスジムを展開されていました。コロナ前までは好調でしたが、直前にややダウントレンドに入り、そのタイミングでご相談をいただきました。しかし、その後コロナ禍に突入し、さらなるダウントレンドに入ってしまいます。人との接触が避けられない店舗ビジネスとしては、コロナが致命傷となり、営業は難しい状態になってしまいました。そのような状況の中で、仲介として買い手候補様を探すお手伝いをさせていただきました。買い手様は、コンサル事業や広告事業、メディア事業、コンテンツ、人材紹介など、幅広い事業を展開されている、年商100億円前後のコングロマリット企業です。特にフィットネスなどの関連分野も、新たな事業ポートフォリオの一つとして組み入れることを検討されていました。そうした背景もあり、弊社からお声がけし、ご提案をさせていただきました。
オーナー様はサラリーマンとして働きながら、副業としてフィットネスジムを運営されていました。しかし、本業と副業のバランスを取ることが次第に難しくなり、副業を抱えきれない状態になっていました。
買い手候補を探す際は、フィットネスジムを経営されている同業者に限らず、シナジー効果を重視して提案を行いました。理由としては、コロナ禍で同じようなビジネスモデルの企業に提案しても、うまくいかない可能性があったからです。コロナ後を見据えた際に、異業種でもシナジーを活かせる企業であれば、事業の成長が期待できます。そのため、アフターコロナを見据えた事業展開の可能性も考えながら、買い手の探索を行いました。また、M&Aには単なる株式譲渡や事業譲渡だけでなく、さまざまなスキームがあります。例えば、第三者割当増資を用いた経営参画権の譲渡も、広い意味ではM&Aに該当します。こうした多様な可能性を視野に入れ、さまざまな観点から探索を進めていきました。 ― 戦略を立てて買い手候補様を探されたと思いますが、今回の買い手様は何に魅力を感じてM&Aを決断されたのでしょうか。梅津様: 売り手様が運営されていたのは、少し特殊なフィットネスジムでした。その特殊性に関心を持っていただけたことが、M&Aのきっかけになったのだと思います。弊社としても、その特殊性を前面に打ち出しながら、買い手様がまだ手を広げていない領域であることを効果的に訴求しました。この提案が買い手様の琴線に触れ、ご関心をお持ちいただけたのではないかと思います。
弊社では、通常お預かりした案件は5〜6か月以内にまとまるケースが多いのですが、今回はコロナ禍に入ってしまったこともあり、成約までに1年以上かかってしまいました。弊社としても苦労した案件で、今でも覚えています。時間はかかってしまいましたが、途中で諦めることなく継続性を意識し、売り手様とも適宜コミュニケーションを取りながら二人三脚で頑張ったことが、特に印象に残っています。
やはり「継続性」、諦めなかったことが成功した一つの要因だったと思います。特に難しいことをしたわけではなく、ひたすら地道に買い手様を探し続けたことが、最終的に成功につながったのではないかと感じています。
オーナー様は、コロナ前から譲渡を検討されていました。最終的に経済的な条件に関しては、当初ご希望されていた内容から少しずれてしまいましたが、割当増資という形で広い意味でM&Aを実現できたことには非常にご満足いただけたとお聞きしています。
売り手のオーナー様には現在も事業に関与いただいており、結果的に良かったと感じています。
将来何が起こるかわからないからこそ、M&Aを経営戦略の一つとして持っておくことは、経営者としての義務だと思います。そのことを念頭に置きながら、信頼できるM&A会社を選定して話を聞いてみることを、一つの選択肢として持っておくといいのではないかと思います。
アーク・パートナーズ合同会社
アーク・パートナーズ合同会社
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この案件は、フィットネスジムのM&Aにおいて、コロナ禍の困難を乗り越えた成功例です。売り手様が本業との両立に悩む中、シナジー効果を重視して異業種にも視野を広げた戦略的アプローチが奏功しました。継続性を意識し、諦めずに買い手様を探し続けた結果、特殊性に関心を持つ買い手様とのM&Aが実現。売り手オーナー様の満足度も高く、事業継続がスムーズに進んだことが評価されています。専門家の協力と信頼関係が成功の鍵となりました。