譲渡額
非公表
売上高
非公表

建設業界の事例

M&A未経験からの挑戦:年商10億企業が描く100億円への道

エリア
関東
オーナー
50代
売却検討理由
業界の先行き不安
スキーム
事業譲渡

朝野 一博

株式会社シードアドバイザリー

本案件では、M&A未経験の企業が、果敢に挑戦しながら成長を遂げた事例です。資金ショート寸前の建設業者を迅速に支援し、わずか24時間でトップ面談を設定するなど、スピーディーな意思決定が成功のカギとなりました。

また、買い手様の「本気度」と「柔軟な対応力」が、売り手様の経営再建だけでなく、その後の100億円規模への成長にもつながっています。M&Aは単なる買収ではなく、企業の未来を切り拓く手段の一つです。成長戦略としてM&Aを検討されている方は、事前準備とスピード感を持つことの重要性をぜひ参考にしてください。

M&A未経験からの挑戦:年商10億企業が描く100億円への

ー案件の概要について教えていただけますでしょうか。

今回の案件は、再生型の事例に該当します。買い手様は総合建設業を営む企業で、私たちと出会った当初は年商10億円規模の会社様でした。M&A自体は未経験でしたが、今後5年以内にM&Aを活用して年商100億円規模へと事業を拡大していきたいというビジョンをお持ちでした。売り手様も同じく総合建設業を営んでおられましたが、年商は約3億円規模でした。この会社様は、息子様が事業承継で引き継いだ企業だったのですが、先代がかなり無茶な経営をしていた影響で多額の負債を抱える状態でスタートされたそうです。その後、経営を立て直す努力を重ねられておりましたが、資金繰りが悪化し、赤字工事が続いたことで資金も枯渇し、資金ショートの危機に直面しており、知り合いの弁護士を通じて弊社にご紹介いただいたものでした。売り手様の人柄は非常に良く、建設業界で真面目に事業を続けてこられた方でした。その中で、「資金がない状況で、あと2週間ほどしか猶予がないのですが、なんとかスポンサーをつけられないでしょうか」とご相談をいただきました。

事業承継の苦境を乗り越えて:資金ショートの建設業が蘇るまで

ー短い期間で迅速な意思決定と進行が求められる中、どのようにプロセスを進めていかれたのか教えていただけますでしょうか。

ご相談を受けた際には、すでに弁護士事務所からの紹介だったこともあり、一定の困難な状況や要因についてのヒアリングが完了しており、必要資料も整っていた状態でした。これを元に売り手様とお話を進め、今後どのようにしていきたいのかを改めて確認しました。売り手様は、自宅が差し押さえられる恐れがある非常に切迫した状況にあり、このままだと住む場所がなくなってしまうと強い不安を抱えておられました。また、できる限り現在の仕事を継続したい、今のチームメンバーと働き続けたいというご希望もお持ちでした。その上で、住居についても現状維持が可能ならば維持したいという切実なご要望がありました。そのお話を受け、私はすぐに近隣の有力な企業様へご連絡を取り、24時間以内に買い手様とのトップ面談をセッティングしました。

​わずか24時間でトップ面談:危機の中で示された迅速な判断

ートップ面談を行った結果、すぐに案件が決定したという点についてその後の経緯についても教えていただけますでしょうか。

24時間後にトップ面談を組みましたが買い手様が初めてのM&Aということもあったため、困窮要因やお人柄、ご希望をしっかりと踏まえたうえで私がスキームを組み立てて引き継ぐ対象を選定しました。その後、必要な資金であるイニシャルコストとランニングコストについてご提案を行い、その場で承諾を得ました。最終的には、家も含めた数千万円規模の案件を買い手様側で買い取りいただくことで合意を得ました。

ー最も印象に残っているエピソードについて教えていただけますか?

ポイントは、買い手様が本当に男気がある方だったということです。数億円のキャッシュが使える状況だったため、売り手様が住む場所がないのは困るだろうとお考えになり、家まで手当てをしてくださいました。その心意気には、売り手様も本当に感謝されておりました。後日談として、どうやらその方がそのストーリーを含めて本を出版されたようです。我々のことも書かれているそうです。現在も一定の地位を確立し、拠点を持ちながら、旧メンバーとともに法人名はそのままで、分離した形で独立採算で活動され、非常に活躍されているそうです。

成功の鍵は“人柄”と“熱量”:初のM&Aがもたらした成長の第一歩

ーこの案件が成功した要因は、どのような点になるのでしょうか。

タイミングです。また、買い手様の企業戦略や業況による部分も大きかったです。買い手様はM&Aについての知識をしっかりと習得されており、非常に意欲的でした。加えてキャッシュも十分に蓄えていたので、M&Aに対して本当に前向きな姿勢でした。そのため、この案件が第1号案件になりました。買い手様の熱量と理解力の高さがうまくいったポイントだったと思います。

株式会社シードアドバイザリー 朝野 一博 氏

M&Aで築いた新たな未来:困難を乗り越えた後のアフターストーリー

ーオーナー様とのアフターストーリーがございましたら、教えてください。

買い手様については、5年以内に100億企業を目指すという目標がありました。その後、他社からの案件を受け入れるための仕組み作りを弊社でサポートしました。その結果、現状で5年が経過し100億円に到達しております。すべてM&Aを活用し、加速度的に成長を遂げられました。具体的には、20億円規模、30億円規模の企業を買収し、あっという間に規模が拡大しました。この第1号案件を皮切りに、我々も様々なサポートをさせていただきましたが、全て黒字経営を実現しております。借り入れも相当増えましたが収益性に問題はなく、非常に順調に進んでおります。買い手の経営者様がしっかりと伝えられる力を持っていたことが、成功の要因だと感じております。

売り手にも買い手にも送る、M&Aで掴む未来へのエール

ー今後、M&Aを検討されてる売り手、また買い手の方に向けてメッセージをお願いします。

企業様に向けてお伝えしたいのは、自社で5年以内に現状の年商の10倍を目指すというのは、現実的に非常に難しいということです。どんなに人材の採用がうまくいったとしても、教育の問題がありますし、純粋に人を増やしていくのは簡単ではありません。特に建設業界では就業者数が減少しており、高齢化が進んでいるため、増やすのは非常に難しいです。そのため、人材採用の戦略としては、シニア層と未経験の若い人を両方採用するというアプローチが必要になります。これをしっかり描かないと、単に人数を増やしても収益性は向上しません。だからこそ、経営に自信があれば、多少のリスクを伴ってもM&Aに挑戦することをおすすめします。もちろん、うまくいくこともあれば失敗することもあるでしょうが、それも学びの一つとして、リスク管理を丁寧に行い、予算を組んで取り組むことで目標としている規模やステージに到達することが可能です。
 一方で、売り手様に対してもお伝えしたいことは、真面目に経営していても一過性のトラブルで事業が困難になることは起こりえるということです。その際に、自力で再生するのは非常に難しい場合が多いです。そうした時に諦めずに、経営をサポートしてくれるパートナーを見つけることができるのがM&Aです。どのような困難があろうとも、必ず助けてくれる人がいます。諦めず、前向きに進んでいくことが大切です。弊社のように再生支援を行っているM&Aの会社もありますし、そういった会社にご相談することをお勧めします。