売り手様の業種は運送業で、生鮮食品の宅配を行っている会社でした。 売上は約4億円で財務状況も非常に良く、長年黒字経営をされていました。買い手様は主にお酒の卸を行っている上場会社でした。
売り手様は50代で若い方でしたが、将来への不安があることが大きな理由でした。 売上や利益は順調に推移していたのですが、特に人手不足が深刻な問題でした。そのため、給与制度の見直しや労働環境の改善に注力されており、残業も少なく非常にホワイトに運営されておりました。しかし、業界全体の問題でもありますが、特に中小企業ということもあり、ドライバーの採用が難しいことから、5年後、10年後を考えた時に単独でやっていけるのかについて不安を抱えておられ、会社の清算までも選択肢として考えられていました。
最初、売り手様は清算の方向で考えられていたそうです。財務内容が良かったため、この状況であれば、従業員に退職金を払うこともでき、綺麗な形で会社を清算することができると考えておられました。しかし、税理士に相談したところ、「それはもったいない。この会社なら十分にM& Aの可能性があり、清算するよりも良い金額で売却できる可能性もある」とアドバイスをされたそうです。そのため、M&Aも選択肢にいれ、弊社をM&Aのご相談先としてご紹介いただきました。最初の面談では、M&A目線での株価算定のお話をさせていただき、のれん代がつくことで評価金額に売り手様が驚かれてていたのが印象的でした。
売り手様が懸念されていたのは、運送業界の中にはホワイトからブラックまで様々な会社があるため、従業員のためにそこを慎重に見極めたいということでした。実際には同業の会社を多くリストアップしましたが、その中で異業種の買い手が現れたのは予想外の展開でした。
買い手様はお酒の卸売業を中心に自社の商品を配送している会社だったので、運送業の免許はお持ちではありませんでした。そのため、今後は運送業の免許を取得して物流の分野にも事業を広げていきたいと考えておられました。 また、売り手様が行われている生鮮食品の配送の温度管理などのノウハウにも非常に魅力を感じられておられ、この点が驚いたポイントでもありました。
手を挙げていただいた買い手候補は非常に多く、最終的にトップ面談は6社程行ったと思います。売り手様が最も大切にされていたのは、従業員を大切にしてくれているかどうかでした。今回、成約に至った買い手様との面談で、ご提案内容や譲り受け後の方針のお話を聞く中で売り手様がこの会社なら間違いないと感じたことが大きな決め手となり、結果的に成約に繋がりました。
買い手様は上場企業でしたが、社長や取締役の方が面談してくれました。本件は弊社は売手FAの立場でしたが、私から失礼ながらも次のような直球の質問をさせていただきました。「御社のような上場会社が、異業種である今回の売り手様に興味を持たれているのはなぜですか」と。その質問に対し、買い手様は嫌な顔一つせずに 生鮮食品の配送のノウハウが欲しいこと、過去に自社で運送業の免許については取得を試みたことがあるが、人員や運行管理のノウハウ構築の難しさで断念したことがあることをお話してくださいました。そういったお話を伺い、先方のお考えが腑に落ち、具体的にお話を進めていくことができました。
売り手様が満足したポイントとして、まず価格面が挙げられます。買い手候補が多くいたこともありご希望の金額に加えて、さらにプラスアルファの金額をご提案してもらったことは非常に大きかったです。また、企業文化の面でも安心して任せられると感じていただけました。クロージング直後に従業員の方の給与も上がったと聞いております。さらに、買い手様の本社から来るスタッフ、例えば総務や人事などの管理スタッフが引き継ぎで参加されましたがどの方もお人柄が素晴らしく、業務の理解も早かった点でも売り手様は非常に満足されているようでした。売り手様ご自身はクロージング時に役員を辞任され、その後は顧問として半年間、週に1度程度顔を出し、新社長様と共にお客様を回ったりしながら引き継ぎを行われているそうです。
まず清算を第一に考えるのはやめた方が良いと思います。 もし親族内や従業員に後継者がいないのであれば、M&Aのご検討をおすすめします。M&Aの可能性がないのであれば、最終手段として清算を選択するのが良いと思います。
株式会社サンアドバイザリー
株式会社サンアドバイザリー
株式会社サンアドバイザリー
売手様は大手食品宅配会社の専属配送業者として約30年の業歴があり、財務内容は良好に推移していましたが、昨今の人手不足や賃金上昇など長期的に会社を発展させていくための課題を抱えていました。
買手様は酒等の飲料と食品の卸売及び配送を主力事業とし、今後は生鮮食品の配送ノウハウを構築したいという戦略を検討していました。
売手様は複数の買手候補企業との面談を実施し、従業員と取引先を最優先に大切にしてくれる買手様を選び譲渡に至りました。