負債圧縮のための決断:ホテル売却の背景
― ディールの概要を教えてください。
売り手様は、ホテルチェーンです。過大な債務を抱えており、それを圧縮するために、グループのホテルを他のホテルチェーンに売却することになりました。
― 売り手のオーナー様は、どのような不安や課題を抱えていらっしゃったのでしょうか。
バブル期から続く債務問題が解消できず、資金繰りの破綻が目前に迫っていました。そのため、突発的な倒産を避けるため、スポンサー型の再生が喫緊の課題となっていました。
地域経済を守るための買い手選定のポイント
― そのような不安や課題に対して、アドバイザーとしてどのようなサポートをされましたか。
業績不振のホテルを再生することは非常に難しいテーマであり、買い手様としては再生のノウハウを持つ企業を選ぶ必要があります。そこで、単なるホテルチェーンではなく、事業再生の実績がある企業を中心に探索しました。また、特に地方のホテルのM&Aでは、従業員の雇用継続や取引先との関係を維持できるかが地元経済に大きな影響を与えるため、その点を配慮してくださる買い手を選定することが重要でした。そのため、意向表明書に雇用や地元業者との取引継続に関する方針を明記していただき、売り手様の不安を解消する形で進めていきました。
株式会社アルファコンサルティング 青木 康弘様
相反する条件を調整した成功へのアプローチ
― 今回の案件で最も印象に残っていることや難しかったポイントを教えてください。
相反する2つの要素を同時に満たすことが、非常に難しかったです。M&Aにおいては、できる限り高い金額で売却することが求められます。一方で、従業員の雇用継続や地元業者との取引継続は買い手様にとって売買の制約となり、売却価格を引き下げる要因になります。
そのため、経済合理性を追求しながら、地域への配慮も考慮する必要がありました。双方のバランスを取り、最適な落としどころを見つけることに苦労しました。
― 具体的にはどのように落としどころを探られたのですか。
売り手様の事業の魅力や将来性、雇用を維持することの意義について、FAの立場から買い手様に色々と提案を行い、ご理解をいただくことができました。従業員の引き継ぎは決してマイナスではなく、事業拡大のための貴重な人的資源となることをお伝えし、非常に価値があることだとご理解いただけるように努めました。
― 今回の案件が成功した要因はどこにあると思われますか。
何をもってディールの成功と言うかですが、特にスポンサー型再生においては、M&A後に事業を継続できたかどうかが評価のポイントとなります。本件に関しては、結果的に事業が再生されて業績も大幅に改善し、現在も事業を継続できていることから、成功したと言えると思います。成功の要因として最も大きかったのは、事業再生能力の高い会社に売却できたことです。事業再生に適した買い手様を選定できたことが、成功の大きなポイントだったと思います。
― 売り手オーナー様が最も満足されたポイントを教えてください。
やはり雇用が維持されたことです。ホテル業は多くの従業員を抱えているため、社員の方々が路頭に迷うことのないように、取引を進める必要がありました。本件においては、一切リストラを行うことなく全従業員を引き継いでいただけたため、その点については非常に満足いただけたと思います。
事業再生がもたらした新たな可能性
― M&A後のアフターストーリーをお聞かせください。
買い手様がしばらく営業を継続されて業績が大幅に改善し、人気ホテルとなりました。その後は、また別のファンドへ売却されたと伺っています。
― M&Aを検討されている売り手様へメッセージをお願いします。
特に業績不振でホテルを売却する場合は、スポンサー型再生が選択肢として挙がりますが、売買交渉においては何を優先するのか選択していく必要があります。通常のM&Aであれば、価格を重視し、最も高い金額を提示した買い手様に売却するのが一般的です。しかし、スポンサー型再生の場合は、買い手に事業再生の能力があるか、雇用を維持できるか、地元への配慮ができるかなど、ポイントが複数あります。その中で、価格なのか雇用の維持なのか企業の再生能力なのか、何を第一に考えるのか順序をつける必要があります。すべての条件を満たすことはできないため、何を最も大切にしたいのか、何を守るべきなのかを整理し、序列をつけていくことは非常に重要です。また、スポンサー型再生のM&Aは利害関係者が多いため、今後の見通しを明確に示し、方針に理解と共感をいただけるように、地道な交渉が不可欠となります。こうした点を十分に考慮しながら進めることが、再生型M&Aにおいて重要ではないかと思います。