譲渡額
非公表
売上高
非公表

食品業界の事例

債務超過からの再生スキームで成功した日本酒酒造のM&A -日本酒の酒造会社の再生案件-

エリア
中部
オーナー
70代
売却検討理由
その他
スキーム
会社分割

加藤 綱義

株式会社フォーナレッジ

この案件は、日本酒製造会社の債務超過からの再生スキームを用いた成功例です。長年の営業赤字と債務超過に悩む売り手様が、再生スキームを活用し、金融機関からの債権カットを受け入れることで、事業を継続できました。売り手様の代表取締役社長が引き続き継続し、地域との関係を重視する買い手様の意向が反映されました。専門家チームのサポートを得て、双方が納得する形で事業再生が実現しました。

債務超過からの再生スキームで成功した日本酒酒造のM&A

ー案件の概要について教えていただけますでしょうか。

 売り手様は愛知県にある日本酒の製造会社様、買い手様は茨城県の酒造会社様でした。弊社は買い手様側のFA(ファイナンシャルアドバイザー)として関与した案件です。スキームとしては第二会社方式を使用し、会社分割を行った上で1億数千万円の価格で譲渡が行われました。結果として、金融機関に約2億円の債権カットを受け入れていただき、さらに売り手様が個人名義で所有していた事業用資産をスポンサーに買い取っていただいた形のディールでした。

ーM&Aに対する不安や課題をオーナー様は抱えていたと思いますが、オーナー様が抱えていた不安、課題はどのようなものだったのでしょうか?

 売り手様の会社は長年の営業赤字とそれに伴う債務超過の状態で、資金繰りが限界まで厳しい状況でした。 銀行からの借入金は約3億円に達しており、そのためのリスケジュールを行っておりましたが、追加の新規資金は調達できない状況でした。 結果として売り手様側のFAも、スポンサーがいなければ事業継続は難しいと判断しておりました。当初は、株式譲渡価格を1円で行い、借入金を全て引き継ぐ形で譲渡を進める案がありましたが買い手様が見つからない状況が続いておりました。


「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が成約の要に

ーM&Aに対する不安や課題をオーナー様は抱えていたと思いますが、それに対してどのようなアプローチをされたのか教えていただけますか?

 この案件では3億円の負債をそのまま引き継ぐのは厳しいという状況でしたが、それでも再生スキームで債務カットができるのであれば受け入れたいというスポンサーが現れました。 同時期である令和4年4月に「中小企業庁の事業再生等に関するガイドライン」(別称「中小企業版私的整理ガイドライン」)を使って債権カットを実施していただきました。同様の仕組みは、中小企業活性化協議会にもありましたが、このガイドラインの特徴は、企業側からトリガーを引けるということでした。 ガイドラインに基づく再生スキームでは、企業側がデューデリジェンスや不動産評価を行い、最新の企業の現在価値を算出します。その企業価値に対して、仮に金融機関の借入金が多ければ、その分をガイドラインに基づいてカットするという仕組みでした。もちろん、この債権カットは好きに実施できるものではなく、再生計画案に基づいて実施します。その際、第三者支援専門家である弁護士がその再生計画案を評価し、その内容が適切であると判断されれば、銀行が債権カットを受け入れるというものでした。

ー印象に残っているエピソードについて教えていただけますか?

 債権カットに関して、バンクミーティングを3回開催し、結果としてはかなりの時間がかかりました。印象に残ったのは、銀行側からの厳しい追及がほとんどなかったことでした。TVのような「どうしてこうなったんだ」「責任をとれ」「身ぐるみを剥がす」などの厳しい詰めは一切なく、金融機関の担当者の方は、上司に稟議を上げる際に必要な項目を確認している印象を受けました。結果として、半年かかったもののスムーズに債権カットを実現することができたと感じております。

ーこの案件が成功した要因は、どのような点になるのでしょうか。

 売り手様と買い手様の両方が、通常のM&Aではなく、再生スキームに対して理解が十分だったことがあります。その上で、弁護士や公認会計士、税理士など、M&Aや債務整理に豊富な経験を持つ専門家チームと一緒に進められたことが、非常に心強いものでした。

株式会社フォーナレッジ 加藤様


代表取締役社長の継続と新たな挑戦

ー売り手オーナー様が最も満足されたのはどのような点だったのでしょうか。

 売り手様は現在も代表取締役社長を継続しているという状況です。バンクミーティングでは、銀行から「社長が続けるのはどうか」といった発言がありましたが、買い手様側は、酒造業というのは地域に密着した事業であり、その地域との関係を重視する必要があるという理由から、引き続き代表を継続して欲しいという意向が強くありました。一方で、これまでの経営管理や生産管理については、買い手様側がコンサルティング・マネジメントを行うことを明言し、銀行にもそのご提案に納得いただきました。

ーオーナー様とのアフターストーリーがございましたら、教えてください。

 買い手様は、現在も日本酒なりウイスキー事業の会社を買収しようとされております。弊社も引き続き関わらせていただいてるのですが、福井県にある元日本酒製造の土地、建物、設備を活用し、破産した会社から引き継いだ設備でウイスキー製造を行う計画が進んでいる最中だということです。

ーM&Aをご検討されている方々へメッセージをお願いします。

 赤字や債務超過、規模が小さいといった理由で会社や事業の売却をそもそも諦めているケースが多いと思います。
 また、M&A業者の報酬が高くてご相談できないといったことをよく聞くのも事実です。そのような時に弊社株式会社フォーナレッジにご相談いただければ、微力ですがやれることは精一杯対応させていただきますので、気軽にご相談いただければ幸いです。