売り手様は70代前半の建設業のオーナー様です。事業を任せられるご子息はいらっしゃいましたが、関係がこじれてしまい、実質的には後継者不在だったことからM&Aを検討されていました。買い手様は、リフォームをメインに行う大阪の建設会社です。これまでに同業の会社を複数M&Aで買収し、全国規模で事業を展開されています。売り手様の会社は兵庫県の過疎地域に位置し、戸建てや注文住宅を中心に、公共事業なども手がけられていました。これまで兵庫県の公募案件に入札し、採算の良い案件を受注されていたものの、戸建は縮小傾向にありました。そのような状況のなか、買い手様はリフォーム事業をメインに展開していることもあり、シナジーが期待できました。例えば、自社で取り扱っているトイレやお風呂を安価で導入できることで、コストの削減が可能になります。また、大阪市内での仕事の獲得も見込めるため、M&Aによりエリアの拡大も期待できました。こうしたシナジー効果を見込めることから、買い手様は売り手様の希望額での買収を決断されました。
本案件は、当社が専任で担当させていただいていました。しかし、売り手様にお会いしてから成約までに約2年を要したため、「他の仲介会社にも相談してみようか」という話が何度か出たこともあります。トップ面談は3回ほど実施し、東京に本社を置く企業にもご関心をお持ちいただきました。ただ、売り手様にとっては、遠隔地であることが不安要素の一つとなっていました。また、売り手様は高齢だったこともあり、M&A後は引退を希望されていました。奥様が専務を務めていらっしゃったのですが、「社長と専務の代わりとなる方を入れていただきたい」ということもご要望の一つでした。しかし、買い手様から「引き続き働いてほしい」との話がでることもあり、条件を満たせる企業をご紹介することが一つのポイントでした。
売り手様は創業社長として、約50年間経営に携わられていました。社員も長年勤務されているベテランが多く、高齢化が進んでいたため、買い手様は「買収後に社員がすぐに退職してしまうのではないか」と懸念されていました。その点が、難航したポイントの一つです。しかし、同社は優れた技術力を有しており、その点が評価されて最終的に成約に至りました。また、遠隔地ではなく、関西エリアの会社であることも一つの条件でした。さらに、「会社の規模が大きすぎると、企業文化が合わないのではないか」との懸念もお持ちでした。買い手様も決して小さな会社ではなかったのですが、何度も対話を重ねていただきました。トップ面談は一度だけでなく、マネジメントインタビューも含めてデューデリジェンスを行う前に3回ほどお会いいただきました。売り手様は新しい戸建ての住宅が完成するたびに見学会を開催されていたのですが、買い手様をお連れし、実際にどのような家を建てているのかご覧いただく機会も作りました。そこで両者の距離が縮まったことが、個人的には印象に残っています。同業ではあるものの業種は異なるため、双方の距離を縮めるポイントをいくつか作りたいと考えてディールを進めていました。
建設業の方に多いのですが、売り手様は親分気質の方で、「自ら後継者を育てたい」との思いをお持ちでした。買い手の社長は40代と比較的若く、「この人なら自分もアドバイスできる」と感じられたようです。また、買い手様も「いろいろ教えてほしい」というスタンスだったため、良いマッチングになったと思います。もともと売り手様は「息子に事業を継がせたい」とお考えで、その願いは叶わなかったものの、買い手様に対しては「血のつながりはなくても、君に任せたい」ともおっしゃっていました。「この人に売りたい」と思わせることができたことが、成功の要因だったと思います。
売り手のご夫妻は非常に仲が良く、ほとんど世間話をしていたような気がします。ゴルフが趣味なのですが、奥様はいつも「ゴルフをする時は、ぜひ遊びに来てね」とおっしゃってくださいます。成約後も一度ゴルフをご一緒させていただいたのですが、その際に非常に喜んでくださったことが印象に残っています。
本件では、多くの時間をかけて買い手様を探しました。同業ももちろんいいのですが、シナジーが見込める企業の方が、より積極的にご検討いただけたような印象があります。金額面でダンピングしてくるような会社も多かったのですが、その中で売り手様の希望通りの価格で売却できたのは、それほど買い手様の意欲が高かった証だと思います。パズルのピースをはめるように、買い手様がどのような企業を求めているのかを徹底的に研究したからこそ、最適なマッチングを実現できたと思います。経験を活かして最適な買い手様をご紹介いたしますので、ぜひご相談ください。
株式会社リーディング
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